川島隆幸教授最終講義

 春分を過ぎ、東大構内の桜もほころび始めました。研究室の引っ越し、卒業式など慌ただしい雰囲気に包まれ、春は別れの季節でもあることを実感させてくれます。そして当グローバルCOE推進者のひとりである川島隆幸教授も、この3月いっぱいで定年を迎えられ、3月19日に最終講義が行われました。


川島隆幸教授

 川島教授は稲本直樹・岡崎廉治両名誉教授の後を引き継いで有機ヘテロ原子化学研究室を担当し、長くこの分野を牽引してこられました。有機化学の主役は炭素と水素、そして窒素や酸素ですが、周期表にはそれ以外にもケイ素やリン、硫黄などたくさんの元素が並んでいます。有機ヘテロ元素化学は、これら多彩な典型元素群の個性を引き出す研究分野であるといえます。Wittig反応やヒドロホウ素化といった有用な合成反応や、医薬や有機半導体などの高付加価値物質が、この分野から数多く生まれています。


研究分野のひとつ、様々に発光する含ヘテロ原子芳香環

 最終講義のタイトルは「リンとの出会いに始まり、典型元素と共に歩んだ40年」。文字通りリンの研究から始まり、含ヘテロ元素小員環の合成、含ヘテロ元素芳香環の合成と性質、超配位状態化合物の合成ときて、先日紹介した「阿修羅結合」に至るまでの研究史は圧巻でした。途中織り交ぜられるユーモア、化学教室の歴史を語る貴重な写真なども、大変に印象深いものでした。最後のスライドでは川島教授の指導した学生126名の名が全て映し出され、感謝の意が述べられて最終講義は締めくくられました。


1973年の有機系集合写真。有名な先生方の若き日の姿も。

講義後の花束贈呈

 川島教授は1965年の入学以来、2年間の博士研究員時代を除いて一貫して東大に籍を置き、研究を行ってこられました。化学教室を長く支えてこられた「生き証人」が去るのは淋しい限りのことではありますが、先生ご自身は移籍し、今後も引き続き研究を行ってゆかれるとのことです。ここで一区切りではありますが、今後もさらに素晴らしい仕事を見せていただけるものと期待しております。