中村優希さんが「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞

 科学の各分野において女性の進出は目覚ましいものがあり、当GCOEでも多数の女性研究者が活躍しています。そんな中の一人、中村優希さん(理学系研究科化学専攻、中村研究室博士課程2年)がこのほど「ロレアル−ユネスコ女性科学者日本奨励賞」を受賞されました。


中村優希さん

 この賞は、日本国内で物質科学または生命科学を研究する博士課程の女性研究者(40歳以下)が対象となり、毎年物質・生命系から2名ずつが選ばれます(今回は宇宙飛行士の山崎直子さんが特別賞を受賞したので5名)。東京大学理学系研究科からの受賞は初めてのことです。また今回は中村さんを含め、4名中3名を東京大学の学生が占めることになりました。

 中村さんの受賞対象になった研究は、「炭素−フッ素結合の活性化による新規合成反応の開発とナノサイエンスへの応用」というものです。フッ素は電子を強く引き込むなど特殊な性質があり、有機化合物に組み込むとその性質を大きく変えることができます。このため、医薬や材料科学などの分野で、フッ素を導入する技術には大変高いニーズがあります。しかしフッ素は反応性が高いため望んだ位置への導入が難しく、また炭素-フッ素結合は非常に丈夫であるために、後から自由に組み替えることも極めて難しいとされてきました。


フッ素を含む医薬品の一例・糖尿病治療薬シタグリプチン。黄緑色がフッ素

 中村さんは巧妙な触媒設計によってこの常識を覆し、「炭素-フッ素結合を切断して炭素-炭素結合に組み替える」という離れ業に成功しました。これは含フッ素化合物の合成戦略を大きく広げ、新たな医薬や材料設計の可能性を拓く研究といえます。フラーレン誘導体にフッ素を導入し、新しい機能を持つ化合物を創る試みも既に行われていますので、今後の展開がさらに期待されます。


 今回の受賞は素晴らしいことですが、他にも優れた研究をしている人はたくさんいるでしょうし、広く門戸を開いている賞も数多く存在します。こうした受賞は将来の可能性を大きく広げることにもつながりますので、学生さんでも我と思わん方はぜひ積極的にチャレンジしていただきたいと思います。