1月16日 キャリアシンポジウム「Take off for Your Dream!」

 去る1月16日、東大理学部小柴ホールにて化学GCOEキャリアシンポジウムが開催されました。海外から短期留学生を招き、東大の学生と共に「夢」をテーマに発表、化学者としてのキャリアを考えるという趣旨です。留学生はしばらく日本に滞在し、交流を深めつつ研究を行ってゆく予定となっています。

このシンポジウムは毎年開催してきて今回が5回目、そして最終回となりました(前々回前回のレポート)。今回はサブタイトルを「Take off for Your Dream!」とし、OBなども数多く招いて講演をいただきました。


リーダーの中村栄一教授より、GCOEの5年間を振り返る発表。


堂免研究室出身で、サウジアラビアアブドラ王立科学技術大にて活躍する高鍋和広助教授。宮殿かと見紛うような、校舎の豪華さに全員驚愕。ふだんあまり知る機会のない、サウジの研究事情なども興味深いものでした。


中村研究室出身で、20倍近い倍率を勝ち抜いてシンガポール南洋工科大助教授の座に就いた吉戒直彦博士。海外で研究室を持つというのは相当な苦労があると思いますが、それを乗り越えて研究はみごと花開きつつあるようです。


長谷川研出身で、30歳の若さで高エネ研准教授に抜擢された阿部仁博士。世界に飛び出し、人とつながり、人生を楽しんでほしいという、明快かつ力強いメッセージをいただきました。


相田研野崎研を経て、名古屋大学伊丹研究室助教となった瀬川泰知博士。学生時代の経験から現在の活躍に至るまで、元気の出る講演でした。


中村研究室D2の小島達央さんは、オランダ・Feringa研究室への短期留学について発表。渡航中に大震災が起こり、帰国が遅れるというハプニングにも見舞われたものの、非常に実り多い日々であったようです。


そこここで盛り上がるお昼のポスターセッション。


午後のセッション。有機化学界の重鎮・Rick Danheiser教授の登場で、会場のムードも引き締まる。写真にあるビーバーは、MITのマスコットなのだそうです。


大連理工大学の期待の若手・陸安慧教授。炭素材料の研究者で、写真は炭素繊維の強さの秘密をラーメン打ちになぞらえて解説しているところ。中国には政府その他からいろいろなバックアップがあるので、日本の若者にもぜひ来て欲しいということでした。


海外での豊富な経験を生かし、現在英国王立化学会の日本代表を務める清家弘文博士。ポスドク経験者の、研究以外への転身の例として、非常に参考になるお話でした。


味の素勤務の本間達也博士。自らの実り多かった3年間を語り、博士課程進学を強く後輩に勧めるメッセージ。ユーモアをふんだんに交えた、見事なプレゼンテーションでした。


メインイベント?のパネルディスカッション。「博士学位は国内で取るべきか、海外で取るべきか」がテーマ。しっかりと持論をぶつけ合い、レベルの高い議論がなされていました。


中国からの留学生・劉媛媛さん。「Calculating My Dream」というユニークな演題で、新規触媒の開発にかける夢を語ってくれました。


鈴木研究室のカン ビョンイルさん。シュバイツァー博士に憧れ、将来はアフリカのために働きたいという希望を持っているとのこと。現在のRNA研究を、アフリカのエイズ制圧に生かしたいという素晴らしい内容でした。

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 今回が5回目のシンポジウムでしたが、年を追うごとにみな英語のスキルが上がり、講演内容の方もどれをとっても見事なものでした。本グローバルCOEはこの3月をもって終了となりますが、こうしたプログラムで育った「COE世代」が今後の学界を盛り上げていくだろうことをはっきり予感させるものであったと思います。
 なお本シンポジウムは1月20日付、朝日新聞の論説欄でも取り上げられ、海外への若手の雄飛などが高く評価されています。合わせてご覧いただければ幸いです。