1月19日・シンポジウム ”My Dream as a Professional”

1月19日、第3回グローバルCOEシンポジウム「My Dream as a Professional」が開催されました。各国から集まった留学生と、東京大学の学生たちが一堂に会し、それぞれの「夢」を語るというテーマです。また、東大で博士号を取得して活躍する先輩や、海外での研究経験を持つ教員からの講演も併せて行われました。

 「How to succeed outside of Japan」のタイトルで、最初に講演したのは大山茂生(Ted Oyama)教授。英語の重要性、海外の大学で重視されること、博士の給料の日米差など、長い海外での研究経験を持つ大山教授ならではのお話でした。聴衆に投げかける質問や話の運びも面白く、講演の仕方という意味でも勉強になった気がします。


思い込み、無意識のルールに囚われてはいませんか?

 続いてのファーストセッションでは、留学生たちと東大生が10分程度で自分の「化学者としての夢」をプレゼンテーションしました。「夢」という以外テーマは自由でしたので、自分の研究の将来の展開を語る人、教授になって研究室を持ちたいという人、自らの国に科学と教育で貢献したいと語る人、地球の歴史と今後の人類を語る人まで、実に様々。個性豊かなのももちろんですが、みな実に意識が高いことに驚かされます。


インフルエンザ治療薬開発の夢を語ってくれた崔毅さん(中国・北京大学)。


ノーベル賞宣言(?)も飛び出したClaude Marceauさん(カナダ・ラヴァル大学)


いったん企業に入りながら復学、研究を進めている草本哲郎さんの話はさすがに深い。

 昼からはポスターセッションが行われ、各自が自分の研究についてざっくばらんに話し合う姿が見られました。世界各地で行われている、広い範囲の研究が発表されているにもかかわらず、すぐその場で活発なディスカッションが始まるあたり、サイエンスは素晴らしい世界の共通語だと感じます。



ポスターセッションの様子。

 午後のセッションは、まず柳沢幸雄教授の講演 “Comparison of Harvard University
and University of Tokyo from faculty member's viewpoints” でスタート。アメリカの大学での自由と責任、オープンさの一方の厳しさについて語られ、ハーバード大学と東大の教授を歴任した同教授ならではの話は実に印象的でした。


柳沢教授の講演。教授会の様子など、リアルな話もありました。

 サードセッションでは、東大で博士号を得て活躍する先輩諸氏の講演。博士号をどう生かし、社会の中でどう生きるか。聴衆の学生にとって、比較的身近な存在の先輩たちによる話はリアリティがあり、みな熱心に聞き入っていました。お三方とも非常によい話をしていただき、個人的にも実に印象深いセッションであったと思います。


ロレアル・上川裕子博士は自らの転機を語り、後輩たちに熱いメッセージを送る。


病を乗り越え、医薬研究者として活躍する日産化学・猿橋康一郎博士。感動的でした。


ルーマニア出身のイリエシュ・ラウレアン助教(東大)。異国の地に乗り込み、研究にかける思いをユーモアたっぷりに語ってくれました。

 続くセッションはパネルディスカッション。大山教授と日・中・韓・アメリカ・カナダの学生が“Steps to Realization of Dreams”のテーマで語り合いました。パネリストの学生は全員アカデミック志望とのことで、教授になるには、博士取得の意義、各国の博士号事情といった話題が話し合われました。また、企業における博士の存在といったことも話題になり、会場からの意見もいろいろと出て活発な議論となりました。


パネリストたち。

企業が求める人材とは?

 最終セッションは再び10分間の「My Dream」プレゼンテーション。個人的には、アジア各国からの留学生が、いずれも故国の研究と教育に賭ける熱い思いを語っていたのが印象的でした。明治の頃、海を渡った先人たちもこのような思いだったのだろうか?だとすれば現代日本の我々が抱くべき志は?などと考えさせられた次第です。


オックスフォード大学留学の様子を報告する田辺佳奈さん。


故国で物理教師になるという夢を熱く語ってくれたNgyuenさん(ベトナムホーチミン教育大)。

 全体を通して、英語スピーチの能力はもちろん、発表者それぞれの「志」の高さに非常に感銘を受けたシンポジウムでした。自分の夢を具体的な形にまとめて発表するというのは、当人にとって将来のビジョンを熟慮する大変によい機会ですし、聴衆にも同じ効果を与えたことでしょう。またOBや先生方の体験談も、自分の将来像を固めるために大いに役立ったことと思います。
 各国から集まった留学生はこの日こっきりで帰国するのではなく、1〜2ヶ月の間日本に滞在し、各研究室で実験を行います。彼らの「志」が日本の学生と接することで、お互いにどのような化学反応を起こすのか、非常に楽しみです。