2009-01-01から1年間の記事一覧

日立一高見学

本日、茨城県立日立第一高校のみなさんが東京大学を見学に来られ、担当・佐藤が学内を案内いたしました。日立一高は「スーパーサイエンスハイスクール」に指定されており、その行事の一環としての見学とのことでした。 今回は学内の施設いくつかと、東大で行…

テロメアの化学

こうした「テロメアの化学」は、どう役に立つ可能性があるのでしょうか?ひとつには、ガンの新たな治療法に結びつく可能性があります。前述の通り、多くのガン細胞はテロメラーゼによって短くなったテロメアを伸長することで、いくらでも増殖できるように変…

テロメアの謎を追う

テロメア研究に対しては今年ノーベル賞が出されましたが、その謎解きがすっかり終わったわけではありません。分子レベルでテロメアの構造を読み解いて行くべく、小宮山研では徐岩特任助教を中心にパワフルに研究を進めています。 徐岩特任助教例えば小宮山研…

テロメアとガン

この「DNAのしっぽ」は、実のところ生物の運命を考える上で大変重要です。それはこのテロメアが、細胞増殖制御の鍵を握る存在であるからです。細胞分裂のたびにDNAは複製されますが、テロメア部分は全てはコピーされず、少しずつ短くなっていきます。テロメ…

小宮山研究室(2)〜化学の目で、テロメアの謎を解く〜

小宮山研究室では他にも魅力的な核酸の化学を展開しています。ひとつは、今年2009年、ノーベル医学生理学賞の対象となったテロメアの研究です。 小宮山眞教授 生物のDNAは、細胞核の中でただ長々とのたくっているわけではなく、ヒストンと呼ばれるタンパク質…

全国グローバルCOE140拠点による声明発表

去る12月3日、13時から東京大学・小柴ホールで、全国グローバルCOE140拠点による声明発表と記者会見が行われました。11月25日の「事業仕分け」において、グローバルCOEへの資金が1/3程度縮減という判定が下されたことを受けてのものです。 壇上には北海道か…

ノーベル賞・フィールズ賞受賞者による事業仕分けに対する緊急声明

本日、理学部1号館小柴ホールにて、「ノーベル賞・フィールズ賞受賞者による事業仕分けに対する緊急声明と科学技術予算をめぐる緊急討論会」が行われました。出席したのは小林誠(2008年ノーベル物理学賞)・野依良治(2001年ノーベル化学賞)・森重文(1990…

大越教授・日本IBM科学賞受賞

理学系研究科・化学専攻の大越慎一教授が、第23回IBM科学賞を受賞することになりました。「授賞対象者は、物理、化学、コンピューター・サイエンス、エレクトロニクスの基礎科学研究の幅広い分野で優れた活動を行っている、国内の大学あるいは公的研究機関に…

パイオニア・スピリット

この他にも核酸化学の分野で多くの業績を挙げている小宮山教授ですが、意外なことにこの分野に参入したのは40歳を過ぎてからで、しかも当時は研究する人が極めて少なかったということです。未知の分野だけに、自分の研究のオリジナリティはどの程度なのか、…

PNAを「つっかい棒」にする

前述のようにPNAは、相補的な配列を持つDNAと強く結合してハイブリッド二重鎖を形成し、これはDNA二重鎖に比べても安定です。つまり、適当な配列を持った2本のPNAを二重鎖DNAと混合すると、PNAはDNAの二重鎖をほどいて割り込み、つっかい棒のように二重らせ…

PNAの導入

「ペプチド核酸」(PNA)と呼ばれる化合物があります。ペプチド状のバックボーンに核酸塩基が枝のように生えた構造で、DNAやRNAとよく似た配置をとることが可能です。実際PNAは、相補的な塩基配列を持つ一本鎖DNA・RNAと、水素結合によって安定な二重鎖を形…

セリウムの発見

何とか「優しく」DNAの鎖を切る手法はないものか――。こうした加水分解反応には、しばしば各種の金属イオンが触媒となります。そこで小宮山教授のグループが数多くの金属を試した結果、行き当たったのはセリウム(IV)というイオンでした。驚くべきことに、セリ…

制限酵素とは

現在各分野でDNAの研究・応用が花盛りなのはご存じの通りです。この隆盛に、「制限酵素」が果たした役回りの大きさは計り知れません。制限酵素はDNAの4〜6塩基配列を認識し、その場所で二重鎖を切断します。制限酵素には多種多様なものが知られており、それ…

精確に、望んだ場所でDNAを斬る〜小宮山眞研究室〜

今回は小宮山眞教授の研究室にやって参りました。小宮山教授は当グローバルCOE推進者の中で唯一駒場キャンパスに本拠を構えており、担当者佐藤は初めての駒場行きとなりました。 小宮山眞教授 小宮山教授の専門は核酸化学で、主なテーマは以下の4つです。 (…

夕暮れの東京大学

日が沈むのがずいぶんと早くなりました。東大のキャンパスには歴史的な建物がたくさんありますが、その美しさが最も際だつのは夕暮れ時ではないかと思っています。 総合図書館は1928年の竣工といいますから、80年以上を経た建物ということになります。この外…

中村栄一教授、紫綬褒章受章

理学系研究科・化学専攻の教授であり、当GCOEのリーダーでもある中村栄一教授が、2009年秋の紫綬褒章を受章されることとなりました。紫綬褒章は「学術、芸術上の発明、改良、創作に関して事績の著しい方」に贈られるもので、当GCOEからは2003年秋の藤嶋昭特…

最近のGCOE

東京大学のロゴマークは、イチョウの葉をデザインしたものです。それだけのことはあって学内にはイチョウの木がたくさん並んでいます。今はギンナンの実がぼろぼろと地面に落ちてまあ少々臭かったりするのですが(^^;、これから美しく黄葉して目を楽しませて…

第16回理学部公開講演会

東大理学部では、半年に一度公開講演会を行い、ひとつのテーマに基づいて第一線の研究者が一般向けに語るという催しを行っています。次回は来る11月8日、安田講堂にて開催され、当GCOEからは中村栄一教授(理学系研究科・化学専攻)が「百聞は一見に如かず −…

池田菊苗教授のグルタミン酸、「技術未来遺産」登録

昆布やかつおぶしの「ダシ」は、日本の食卓には決して欠かせない味です。このうまみ成分がグルタミン酸ナトリウムという化合物であり、調味料として広く普及していることはみなさんご存じのことでしょう。 グルタミン酸ナトリウム 実はこのうまみ成分のルー…

ケージ分子で時間を操る(2) 〜藤田誠研究室〜

ネットワーク状錯体 ということで、前回の続きです。 藤田教授の研究は、こうしたケージ状錯体だけにはとどまりません。こうしたケージが無限に繰り返された構造を持つ、ネットワーク状錯体の研究にも力が注がれています。藤田教授は、実際にはこちらの方を…

ケージ分子で時間を操る(1) 〜藤田誠研究室〜

自己組織化のマジック 全く個人的な感想で申し訳ないのですが、このブログの担当者(佐藤)が「世界で一番美しいケミストリー」と勝手に思っているのが、藤田誠教授(工学系研究科応用化学専攻)の研究です。藤田研から生み出される分子の造形美はもちろんの…

今回のキーワード:水素貯蔵

先日のエントリでも述べたように、水素は環境を汚染する廃棄物を出さない、クリーンなエネルギー源として期待される。しかし水素は最も軽い気体であり、同じ熱量を発するガソリンに比べて3000倍近いスペースを必要とする(常温、1気圧)。そこで、様々な水素…

第8回ZESTYネットワークセミナー

11日、第8回ZESTY ネットワークセミナーが開かれました(当セミナーについて詳細はこちら)。今までは理学部本館5階講堂にて開催されていましたが、現在工事中であるため、今回より小柴ホールでの開催となりました。 今回の演者は無機化学研究室(西原研究室…

 若手レクチャーシッププログラム

当拠点では、着任から4年目以降の若手教員を対象とした「若手海外レクチャーシッププログラム」を実施しています。これは、1〜2週間ほどかけて世界トップレベルの研究機関数カ所を巡りつつ自らの研究成果を講演し、多くの研究者とディスカッションを行うとい…

プレゼンあいうえお 〜尾嶋正治教授〜

さて先日のエントリで紹介した尾嶋正治教授ですが、教育方針に関するお話がまたとても面白かったので、こちらに別記事としてまとめさせていただきたいと思います。 尾嶋教授 尾嶋教授はホームページのプロフィールに「趣味は学生に奨励賞を取らせること」と…

燃料電池の新時代を切り開く 〜尾嶋研究室〜

今回は工学系研究科・応用化学専攻の尾嶋正治教授の研究室に伺いました。半導体を中心としたナノデバイスの開発、結晶成長、高輝度放射光を用いたそれらの測定技術の開発、燃料電池の触媒開発といったところが尾嶋教授の専門です。 窒化ガリウムやケイ素系な…

野崎京子教授、名古屋メダル受賞決定

野崎京子教授(工学系研究科・化学生命工学専攻)が、2009年名古屋メダル(シルバー)を受賞されることが決まりました。名古屋メダルは合成化学者を対象とした賞で、「国際的に偉大な業績を挙げている研究者」に対してゴールドメダルが、「今後の発展が期待…

中村栄一教授、ACS Cope Scholar Award受賞

当GCOEの拠点リーダーである中村栄一教授(理学系研究科・化学専攻)が、2010年のアメリカ化学会賞(2010 Arthur C. Cope Scholar Award)を受賞することになりました。同賞は有機化学分野において卓越した業績を挙げた研究者から、30代2名・40代4名・50代4…

 自己組織化カプセル分子 〜塩谷光彦研究室〜

さて今回は理学部の塩谷光彦教授のグループに話を伺うことになりました。先生の研究分野は「機能性を持った錯体を創る」というところにあり、研究室からは見た目にも美しい興味深い化合物が、続々と登場しています。 塩谷光彦教授 金属イオンは、化学の世界…

大学院入試のこと

8月末から9月初めにかけて、東京大学の大学院修士課程の入学試験が行われます。当拠点の理学系・工学系の化学4専攻でも、この時期に相前後して試験が進められます(願書は〆切済み)。 このブログの担当者(佐藤)は、今年4月から東京大学に籍を置くように…