夢・化学-21 一日体験実験教室

 6歳から化学実験に取り組んでいたというRobert B. Woodward(1965年ノーベル化学賞受賞)の例を引くまでもなく、早い時期から化学の現場に触れることは、優れた化学者になるために重要なことです。そんな機会を作る試みの一つとして、「夢・化学-21」があります。本日7月31日、その一環として「一日体験化学教室」が行われ、工学部化学・生命系3学科(応用化学科・化学システム工学科・化学生命工学科)に高校生たちがやってきました。
初めて研究室という、「科学」が生まれる場所に足を踏み入れた高校生たちにとっては見る物全てが珍しく、その雰囲気に目を丸くしていたようです。

 西郷研ではインディゴによる布の染色実験が行われていました。インディゴは有名な藍色の染料ですが、塩基性で還元してやると黄色に変化し、水に溶けやすくなります。ここに糸を浸し、その状態で空気酸化してやると藍色に染まるという原理です。色が変わるというのはシンプルですが印象に残りやすく、高校生たちも実験を楽しんでいたようでした。



インディゴの酸化還元反応

ちょっとこわごわビーカーを振ってみる(西郷研にて)

 尾嶋研では、レーザーを使った窒化ガリウムの合成を演示していました。窒化ガリウム青色LEDの原料として有名ですが、なぜ窒化ガリウムであるのか、その合成の何が難しいのかといったレベルから詳しいレクチャーが行われた上での実演です。現代の機器はみなブラックボックス化してしまい、原理がどうなっているのかわからなくなっているので、こうした機会は貴重でしょう。



レーザー発生装置をのぞき込む。ゴーグル必須。(尾嶋研にて)

 野崎研ではナイロン合成が行われました。アジピン酸塩化物とヘキサメチレンジアミンの溶液をそれぞれ作り、静かに注ぐと界面からナイロンが出来上がってきます。これをピンセットでつまみ上げ、白いナイロンを巻き取っていくというもの。現在隆盛を極める高分子化学の原点ともいうべき実験です。



ナイロンがとれた!(野崎研にて)

 高校生たちにとっては、実験をした、レクチャーを受けたといったこともさることながら、「最先端の雰囲気に触れた」ということ自体が大きな経験だったのではないでしょうか。彼らの中から、将来日本の化学を牽引する人材が出ることを期待したいところです。

また、今回は来られなかった、知らなかったという方には、実は来週もう一度チャンスがあります。8月6日に東京大学オープンキャンパスが開催され、各研究室で実験やレクチャーが行われます。理学部工学部ともさまざまなイベントを用意してお待ちしておりますので、化学に興味のある高校生の皆さんは、ぜひ本郷まで足を運んでいただきたいと思います。